お米の種類と変化|進む米粉の開発

日本の食卓に欠かせないお米ですが、現代の食の多様化において、日本人のお米の消費量は年々、減少傾向にあります。1人当たりの年間消費量は、ピーク時に比べ、半分以下に減り、平成26年以降はパンの支出金額が米の支出金額を上回っているというデータがあります。

また、コロナ禍における飲食業界の低迷において、生産量と消費量のバランスが崩れる、コメ余りという現象も起きており、お米業界では現状を改善するためのさまざまな対策や開発が行われています。

本記事は、日本にとって欠かせないお米の基礎知識とお米の未来に欠かせない米粉の存在について改めて解説し、まとめたものです。

10万種?!世界のお米の種類

お米は、小麦粉とトウモロコシとともに世界3大穀物のひとつです。世界では年間4億8000万トンものお米が生産されており、そのほとんどがアジア圏で生産され、世界の生産量のうち、中国・インド・インドネシアの上位3カ国の生産量が全体の約6割を占めています。

また、全世界で1000品種以上、細かく分けると10万種のお米が生産されているといわれており、その中でも代表的な品種がインディカ米・ジャポニカ米・ジャバニカ米の3品種です。

インディカ米

インディカ米は中国やベトナム、バングラディッシュやアメリカ南部など広い地域で栽培されており、気温が高い熱帯地域や亜熱帯の地域での栽培が盛んです。日本ではジャポニカ米の生産が盛んですが、世界の生産量のうち、約8割がインディカ米の生産になります。

細長く、炊くとパサパサとしており噛みやすく、パエリアやピラフ、タイカレーなど、味付けをして使われている事が多い品種です。

1993年、日本は冷夏によりお米の収穫が例年の7割まで落ち込む平成の米騒動が起きました。不足分として輸入で賄われたのが世界の生産量の6割を誇るインディカ米でしたが、お米を炊いてそのまま食べる食文化の日本ではあまり浸透しませんでした。

ジャポニカ米

日本で栽培されている品種のほとんどがジャポニカ米です。ジャポニカ米は短く粘りがあるのが特徴の品種で、日本や朝鮮半島、ヨーロッパの一部などで栽培されています。噛むほどに甘みが広がり、冷めても劣化しにくいジャポニカ米は日本食に欠かせないお米となりました。

近年では、日本などの米を主食としている地域に輸出するために、オーストラリアやアメリカでも栽培されています。

ジャバニカ米

味わいが特徴などが、インディカ米とジャポニカ米の中間といわれている東南アジアやイタリアなど、亜熱帯の限られた地域でしか栽培されていないジャバニカ米です。

本場のパエリアやリゾットなどに使われていますが、あまり流通しておらず、手に入れるのが難しい品種です。

参考:農林水産省/生産量と消費量で見る世界の米事情

世界の生産量の9割がアジアで生産される理由

アジア圏に恵みを与えるモンスーン


米国農務局によると、年間約4億8000万トンものお米が生産されており、そのうち全体の約9割がアジア圏にて生産されています。

なぜ、アジアにおいて米作りが盛んに行われてきたのか、それはアジア特有の気候が関係しているからで、季節によって吹く風の方向が変わるモンスーン(季節風)の影響が大きいといわれています。

夏になると梅雨やジメジメとした雨の日が続くのは、モンスーンがアジア全域に湿った空気を運んでくるからであり、お米の生育に欠かせない雨量(水)をもたらしてくれるモンスーンはアジア圏の米作りにおいて、とても重要な役割を担っています。

日本における、お米のはじまり

稲作はインドアッサム地方から中国の雲南省にかけての山間からはじまったとの説が有力で、中国の長江の遺跡では水田跡や灌漑設備が発見されています。

日本で栽培されているお米のほとんどがジャポニカ米という品種のお米ですが、本来、日本では自生していない熱帯性の植物なので外国から伝わったものだとされており、福岡市の板付遺跡からは、約2400年も前の水田の跡地が見つかっていることから、日本には縄文時代の終期に伝わったと考えられています。

約900品種?! 日本のお米の種類が多い理由

約2400年前から続いている日本のお米作り。コシヒカリやひとめぼれ、ヒノヒカリなど、地域によってさまざまな品種のお米が作られており、現在では約900品種以上にものぼるとされています。

このように日本において、お米の種類が多いのには様々な理由が考えられます。

まず、日本は南北に長い地形をしているため、地域によって稲作環境が異なります。そのため、地域に合ったお米づくりをする中で新しい品種開発が盛んに行われるようになりました。

近年の温暖化に対応するためにも、暑さに強い稲を作るなど、新しい品種が開発されています。品種開発をすることで、万が一、ひとつの品種が気候変動や害虫・病気などの影響を受けたとしても、収穫が大きく減るリスクを抑えられ、農家への負担軽減にも繋がっています。

また、日本ではお米はそのまま食べられるだけではなく、もち米や酒米といった、お菓子やお酒などの加工用のお米や、稲わらや田んぼアートに使用する工芸用の稲などにも活用されており、これも日本のお米の品種が多い理由のひとつです。

ご当地米やブランド米の登場

お米の品種開発が盛んに行われている中で、地域によって品種の異なるご当地米やブランド米と呼ばれるお米が近年、続々と登場しています。また、同じ品種であっても気候や土壌・栽培条件によって、米の主成分であるデンプンが変化し、「粘り」「硬さ」「香り」「甘味」などの違いが生まれるため、楽しむことができます。

毎年3月には、より良いお米作りとお米の消費拡大に役立てるために、全国規模の産地品種について食味評価を行っているランキングが発表されています。食味評価専門のエキスパート20人により、外観・香り・味・粘り・硬さ・総合評価について、非常に繊細な評価をし、基準米より特に良好なものを「特A」、良好なものを「A」、同等のものを「A’」、やや劣るものを「B」、劣るものを「B’」と評価し、このランキングで特Aと評価されたものが、ブランド米と呼ばれています。

ブランド米は、青森県産の青天の霹靂や静岡県産のにこまる、北海道産のふっくりんこなど、珍しい名前も多く、お祝い事やお礼の品など、贈り物としても人気を博しています。

ピーク時の約9割?!減少する消費量

ご当地米やブランド米など、さまざまな品種が開発され、味の違いを楽しむことができるお米ですが、生産量は年々減少し、米の1人当たりの年間消費量は、昭和37年度をピークに大幅に減少。昭和37年度は1人当たり118kgの米を消費していましたが、令和2年度の消費量は半分以下の50.8kgにまで減少しています。

これは、食の多様化により、お米以外にも麺類やパンなど、主食の選択肢が広がったことも原因の一つであり、具体的な例として、家庭における1世帯当たりお米とパンの年間支出金額の推移を見ると、平成26年以降はパンの支出金額が米の支出金額を上回っています。

また、コメ離れの原因は若者ではなく、中高年の食生活の変化によるものだというデータも出ており、特にパンはお米よりも手軽に食べることができ、食感も柔らかく食べやすいため、今後も需要が増えていくと考えられています。

参考:農林水産省/米粉をめぐる状況について

コロナ禍も影響!コメ余り問題

お米の消費量が減ることで、生産量とのバランスが悪くなり、お米の価格が値崩れを起こし、経営難に陥る生産者が増えていくのではないかという不安の声が上がっています。また、コロナ禍が追い打ちをかけ、コメ余りがここ数年で、危機的な状況になっています。

そういった中で問題になっているのが、「コメ余り」の問題です。

新米に切り替わる2021年11月以降に持ち越した古米の在庫は、約40万トン以上で茶碗50億杯分の超過で、解消するためには、1人あたり、毎週あと1杯の消費増が必要だといわれています。

コメ余りを解決! 注目される米粉

コメ余りを解消するためにも、パンの年間消費量の増加や、中高年のパンの消費が増えていることを受けて、「小麦粉に代わる米粉の需要開拓」が具体的な対策として効果的であると考えられています。

米粉の存在は、近年、健康面においても注目されており、グルテンフリーなどの食事療法においても小麦粉の代替え品として活躍しています。

また、日本における小麦粉の消費量のうち、約9割がアメリカやカナダ、オーストラリアなどの海外からの輸入によって賄われていることから、国内自給率ほぼ100%の米粉に代替えすることによって、日本の食料自給率アップにも繋がると考えられており、国産米粉パンを1人、1ヶ月3個ずつ食べると、 自給率が1%アップするというデータもあり、そういった面でも日本の未来において米粉はとても重要な存在です。

米粉の特徴

米粉は、その名の通り、米を砕いて粉状にした食材のことで、国内生産されている米粉の多くは、うるち米もち米の白米を原料としています。

玄米の状態で粉砕したものや、酒米を磨く時に出る粉を米粉として利用している製品もあり、海外では、インディカ米や赤米などを原料とした米粉も作られており、その種類は多岐に渡ります。

また、小麦粉に含まれているグルテンを含まないため、腸内環境にも優しく、アレルギーを持っている方でも安心して食すことができる食材です。

米粉の種類

米粉は、もち米とうるち米の2種類から作られており、うるち米は日本人が日常的に食べている白米のことで、もち米は、お餅や赤飯などもっちりとした食感が特徴のお米のことです。

また、製造方法の違いにより『生粉 (ベータ型) 製品』『糊化 (アルファ型) 製品』の2つに大きく分けられ、『生粉製品』とはうるち米・もち米を生のまま粉にしたもので、『糊化製品』は熱加工をおこない糊化させて粉にしたものをいいます。

具体的に、生粉製品は、団子や柏餅、白玉などに使われる上新粉、牛皮粉、白玉粉のことで、糊化製品は、落雁や豆菓子、おこしなどに使われる、みじん粉や落雁粉、寒梅粉のことをさします。

参考:東海農政局/米粉の種類と用途

進む開発!注目の米粉・ミズホチカラ

近年では、製粉技術が進んだことで米をより細かく粉砕できるようになり、より粒子の細かい米粉が販売されるようになり、パンや焼菓子作りに一役買うようになりました。

また、米粉として利用するためにお米の品種改良の研究にも力を入れており、中でも、注目されている品種が、九州沖縄農業研究センターで開発されたミズホチカラです。

この品種は一般の主食用米よりも約20%多く収穫することが可能な品種で、命名の由来は「水田で力を発揮する多収米」という意味だとされています。グルテンの入っていない米粉では再現が難しかった、膨らみやモチモチとした食感が再現され、一見すると、小麦粉を使ったものと区別できないような仕上がりで米粉のなかで、現在、最も支持されています。

また、ミズホチカラ以外にも米粉として活用可能な品種の研究も進んでおり、小麦粉に代わり、米粉が台頭する日がやって来るのも近いかもしれません。

参考:農研機構/水稲の多収新品種「ミズホチカラ」を開発

米粉の活用で、日本の食文化に新しい風を

米粉を使うことは、お米の消費量をアップさせ、日本の未来や米農家のためになるだけではなく、自分自身の身体にも良い影響を与えてくれます。日本のお米文化に新しい風を取り込む米粉、まずは小麦粉の代わりとして、日々の食生活に少しずつ取り入れてみてはいかがでしょうか。

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