「整う腸活」ヨガのメソッドで自律神経の働きを味方に

健康ブームの中でも、より注目されるようになってきた「腸活」というフレーズ。
腸活といえば美しい肌やアンチエイジングに役立つということもあり、以前は美容業界を中心とした美容目的での利用が主流でした。しかし、健康について向き合うことが増えた現代では、健やかな暮らし方への関心も高まり、美容業界に限らず多くの業界から「腸活」が再注目をされています。

このサイトでも以前、腸活をテーマに低FODMAP療法についての記事を公開しました。
実際に日常で行いやすい腸活の情報はこのように「何を食べるか」あるいは「何を控えるか」といった食事法に基づいたものも多く、そもそも消化不良や胃腸の不調がどのようにして起こるのか、また「不調」とされている状態はどのようなものであるかは意外と知られていないことも。

そこで今回は消化の働きをつかさどる、自律神経の仕組みを基に「腸活」に役立つ運動であるヨガのメソッドと合わせて考えていきます。

そもそも自律神経とはどのようなものなのでしょうか

まずは、私たちの身体に備わっている「自律神経」についておさらいをしましょう。最近は特に、自律神経という言葉を、「自律神経失調症」という病名で耳にする方も多いかもしれません。
私たちの身体にはたくさんの神経系と呼ばれるシステムが備わっており、まるで一つのチームのように役割分担をし、相互に影響し合っています。つまり、このバランスが崩れると様々な不調が発生してしまうのです。

ここからは、自律神経が含まれる神経系についての基礎知識をご紹介します。私たちの神経は大まかに体性神経系と自律神経という2種類の神経系に分けられています。これらの違いは「意思で動くか動かないか」がポイントになってきます。

体制神経系は「動かせる」

あまり聞き馴染みのない言葉ですが、体性神経系とは体幹・手足指先などの動作、感覚といった運動をつかさどるもので、多くは私たちの意思によって「動かせる」神経です。例えば、歩行は体性神経系によって行われているので、私たちは「疲れているから、ゆっくり歩こう」と思って歩みを遅くしたり、「時間がないから急いで歩こう」と思って、歩みを早めたりしています。
身体の持ち主である私たちの思考によってコントロールが可能な神経であるということです。

自律神経は「動かせない」

自律神経は体性神経系と対をなすものです。ということは、意思によって「動かせない」神経なのです。自律神経系とは消化・脈拍・循環・体温調節・発汗・ホルモンバランスといった身体の内部の現象をつかさどるものです。今回は腸活をテーマにしているので、消化を例にとって考えてみましょう。
食事によって摂取した食べ物を栄養分や不要なものはどれかを分別をする作業でもある消化ですが、私たちは朝ご飯を食べたあとに、「よし、朝ご飯の分だけを今から消化するぞ」と意識をして消化を始めることはできませんよね。
あるいは、「まだお腹が空いたら困るので、いったん消化を中断しよう!」といって消化を止めることも出来ません。自律神経は、意識の外、私たちの思考の外で活動をするものなのです。

それでは改めて「自律神経」についてみていきましょう。

交感神経と副交感神経の働き

自律神経の話題ではほとんどセットで出てくるこの2つ。それもそのはず、自律神経はこの「交感神経」と「副交感神経」を合わせた神経の総称となっていて、シーソーのように私たちの身体の働きのバランスを調節しています。
ところが、これらのバランスは様々な外的要因によって乱れてしまいやすいのも特徴で、私たちの身体に様々な不調を引き起こしてしまうこともあります。
それではここからは自律神経によって調節されている消化に関わる機能、調節がうまくいかなくなると起こる不調、そしてどのようにバランスを取り戻すのかについて順にご紹介します。

消化と蠕動運動のかかわり

私たちが食事で摂取した食べ物や飲み物を体外に排出するまでの一連の運搬は蠕動運動(ぜんどううんどう)と呼ばれる働きによって行われています。この蠕動運動が自律神経によってコントロールされているのです。
私たちが摂取した食べ物は、重力や引力で自然に体の下に降りてくるのではなく、この蠕動運動によって食道から下の臓器に運搬されています。次に胃に到達した食べ物たちは蠕動運動によって胃液と共に混ぜられ、吸収されやすいペースト状になっていきます。そして、腸で最終的に身体に必要な栄養は吸収され、不要なものは便として排出されます。
この消化活動になくてはならない蠕動運動は副交感神経によって活発化され、交感神経によって穏やかになります。一般的に副交感神経はリラックスをした状態のときに優位に働く神経、ストレスや何らかの影響で身体が緊張状態になると、交感神経の方が働いてしまうので、蠕動運動が鈍くなってしまうのです。
では、蠕動運動が鈍くなってしまうと私たちの消化活動はどのような不調を抱えてしまうのでしょうか?

自律神経と蠕動運動、体への影響は?

交感神経が優位になり過ぎると便秘やそれに伴う不調も併発する可能性が

交感神経が優位になると、蠕動運動が抑制され消化不良・便秘の原因になってしまうのです。
便が長時間大腸にとどまることになると、過剰に大腸から水分を吸い取ってしまい、より硬く、さらには腐敗が進みます。その結果悪玉菌が過剰に発生し、本来なら便と一緒に体外へ排出されるはずの有害物質が血中に流れ出て、さらなる悪循環を引き起こしてしまうのです。
またガスが発生しお腹の苦しさや不快感が出るだけでなく、食欲不振、不眠、倦怠感などの二次的な不調の原因になることも。なんとなくお腹周りがだるいという不調に心当たりがある方も多いかもしれませんね。
これらのもやもやとした不調や便秘に伴う腹痛は蠕動運動の働きが鈍ってしまうことで引き起こされているのです。

副交感神経が優位になり過ぎても怠さや過剰な空腹感の原因に

こう聞くと副交感神経が優位であればあるほどいいようにも思えてしまいますが、副交感神経が優位になり過ぎると、消化吸収が過剰になってしまい常に空腹感を感じてしまったり、身体に必要な最低限度の緊張感もなくなってしまうので、副交感神経によって常にだるさや眠気を感じてしまうことも。
交感神経と副交感神経は相互に影響し合ってバランスを取っているものなので、どちらか一方が活発になり過ぎても良くない。ということですね。

それではどのようにして自律神経を整えていけばよいのでしょうか?
食生活や睡眠・運動習慣、ストレスマネジメントなど方法は沢山あるのですが、今回はそのなかでもより効果的とされている「呼吸」に注目し、ヨガを用いた「腸活」をご紹介していきます。

自律神経は呼吸によってある程度のコントロールが可能

自律神経を整えるには呼吸がポイント

蠕動運動を抑制する役割を持つ交感神経は、胸式呼吸と呼ばれる胸の位置で行われる浅く短い呼吸が行われている時に活発になるとされています。
胸式呼吸になる場面では、緊張状態やストレスなどの精神的・肉体的ストレスがかかっていることが多く、意識が興奮・臨戦態勢に。意識が外の刺激に敏感になっている状態と言っても良いでしょう。つまり休まっていないということです。
一方副交感神経は、腹式呼吸が行われている時に活発になります。腹式呼吸では私たちの身体はリラックスし、深い位置で呼吸をすることができるようになっています。
ストレスや電子機器の刺激など現代社会は緊張状態になる場面が多く、私たちの身体では、交感神経が働きっぱなしなことも。呼吸が浅くなり、その結果さらに交感神経が活発になってしまい身体が十分に休まらずその結果、消化や睡眠の質にも影響を及ぼしてしまうのです。
とはいえ、悪循環というものは見方を変えると、一つが良くなれば連鎖的に他の不調も改善されていくということでもあります。呼吸を整えることで、自律神経のバランスを整えることができ、結果として、消化不全の改善にも役立つのです。

呼吸を整えるヨガで心身のメンテナンスを

ヨガは疲れた身体でも無理のない範囲で、リラックス状態を作り出すことができます。普段意識をしない呼吸に意識を集中させることで、胸式優位の呼吸から腹式呼吸へと呼吸の方法を調節をすることで、自分の意思ではコントロールできない内側の部分も、コントロールができるようになり結果として体内の健康状態も向上していきます。

現在では、初心者向けにヨガ指導を行う教室も多く、椅子に座ったままできるものや少人数制、個別クラスなどライフスタイルと目的に合わせた多種多様なクラスがあります。ヨガを習慣化させられるようになるまでは、非日常の空間で自分自身と向き合ったり、癒しの時間としてヨガを楽しむのも続けやすいポイント。

初めてヨガに挑戦するときには、「猫のポーズ」がおすすめです。その他にも、首まわしや前屈をしてみるといったシンプルな動作で呼吸を意識することができるそうです。

SELECT EYE COMPANYでは呼吸法に特化した呼吸ヨガや初心者の方でも挑戦しやすく、自分の心と身体に向き合うことで体質改善を目指せる「Boss Yoga」のクラスを開講中です。各回単発で参加することができるので自分のペースでヨガを生活に取り入れることができますよ。

今回は自律神経の仕組みと消化の関係性から、不調の改善に役立つ方法として呼吸とヨガをご紹介しました。
本来、交感神経と副交感神経は互いに支え合いながら私たちの身体を健康にしてくれています。
ヨガは自分の身体へ何かを足したり、引いたりして変化させるのではなく、あるべき姿、本来の状態に整えていく側面もありますので、ぜひ今の自分の状態を知るきっかけとしても気軽にトライしてみてくださいね。

参考資料
・小林弘幸『眠れなくなるほど面白い 図解 自律神経の話』日本文芸社(2020)
・原田賢『忙しいビジネスパーソンのための自律神経整え方BOOK』ディスカヴァー・トゥエンティワン(Discover21)(2018)

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