『腸』は第2の脳!? そのイライラや不安、腸内環境が原因かも? 

大事な会議の前や、試験の前、新しい環境で生活を始める際など、緊張や不安を感じると、お腹が痛くなり、不快感を感じる。そんな経験をしたことはありませんか?

『 ストレスを感じるとお腹が痛くなる 』というのは、脳のストレスが腸に伝わるといった、私たちのカラダの仕組みの内のひとつとして、当たり前の現象に感じますが、近年の研究により、脳から腸への一方的な影響だけではなく、腸から脳へと相互方向から影響し合っているということが科学的なデータから分かってきました。

こういったことから今まで、イライラしたり、不安を感じたり、脳のストレスからの現象だと思っていたことが、むしろ、腸のストレスからの感情だったなんてこともあり得るかもしれません。

このように脳と腸、相互に関わり合う関係を近年、【脳腸相関】と呼び、医療機関や研究所などさまざまな場所で研究に力が入れられています。

本記事は科学的に証明されつつある腸と脳の関わりを改めて解説し、まとめたものです。

脳と腸の相互関係

前述の通り、近年、相互に関わり合っていることが分かってきた、脳と腸の関係【脳腸相関】
脳と腸はお互いにどんな働きをしているのでしょうか。

脳の役割と腸にもたらす影響

脳は、呼吸や心臓を動かす生命維持や、食べたものを消化させるなど、人間が生きる上で欠かせない全身のあらゆる仕組みをコントロールしているとても大事な器官です。また、脳がストレスや不安を感じると、脳が自律神経を介して、腸にストレスの刺激を与え、腹痛や下痢などの影響を与えることもできます。

腸の役割と脳にもたらす影響

腸の役割は、食べたものを消化・吸収・排泄することが主な役割だと考えられてきました。しかし、近年、腸は『第2の脳』と呼ばれるように、消化器官の役割に加え、免疫系・内分泌系・神経系の働きが発達しているとても重要な役割を担っている器官であることが、科学的に明らかになってきました。

また、腸には脳に次いで、約1億個の神経細胞が存在しており、腸のコントロールは、脳が全てを支配しているわけではなく、腸自らも判断を下し、コントロールすることができる機能、腸管神経系が備わっていることが分かっています。

腸管神経系は食べ物が取り入れられる咽頭から肛門までの動きや分泌、血流の調節に欠かせない独自の神経系ネットワークで、感知したさまざま情報を処理して、脳に伝達しています。

便秘や下痢などの症状があると、脳が不快感やストレスを感じ、改善されると気分が良くなるのも、腸が脳に対して、状況を伝達をしている証拠です。

こういった相互関係のひとつの要因となっているのが伝達物質のセロトニンと言われています。

幸せホルモン「セロトニン」は腸内から生まれている?!

私たちが幸せを感じる要因であり、うつ病の予防にも役立っている幸せホルモンとも呼ばれる「セロトニン」。ノルアドレナリンやドーパミンの暴走を抑え、心のバランスを整えてくれる作用のある伝達物質のことで、このセロトニンが正常に働くと、人は前向きな気持ちを維持し、幸福感を感じ、健康的に過ごすことができます。

生きる上で、とても大切な働きをしているセロトニンですが、この幸せホルモンのもとである「5-HTP(5-ヒドロキシトリプトファン)」という物質は、脳以外にも「腸内細菌」によって作られていることが分かっています。
人間の体にはこのセロトニンが約10mgほど存在しており、約90%が腸、約8%が血小板、約2%が脳に分布しています。この絶妙なバランスを保つことが心身ともに健康に過ごす上でとても重要で、脳内では気分を安定させ、穏やかにする役割を担っているほか、睡眠にも関係し、腸では、腸を動かす指令を出す際に使われています。

お腹の調子が悪いと不快なのは、脳のセロトニンが減るから?!

例えば、便秘になると腸の神経系は、「セロトニン」を分泌し、便秘解消のため腸が動くように刺激します。腸内では、腸がうまく動くようになるまで「セロトニン」を分泌し続けるため、便秘がひどくなると、腸内のセロトニンが増えすぎてしまうのです。そうすると、脳の「セロトニン」が足りなくなってしまい、不安になったりイライラした感情が起きやすくなってしまいます。

こういったことから、セロトニンのバランスを保つためにも腸内環境を整えておくことがとても大切です。そして、腸内環境を整え、ストレスを軽減した生活を送るためには、セロトニンを作り出す腸内細菌が密集している腸壁・腸内フローラを整えることが、何より重要といわれています。

腸内フローラを整え、心身のバランスを整える

体内のお花畑、腸内フローラとは?

人間の腸の中には、体内に棲む細菌のうち、約9割が棲みついていると言われており、腸壁に腸内細菌が菌種ごと塊になって、腸壁に隙間なくびっしりと張り付いています。この状態のことを種類ごとに並んでいる姿がお花畑に見えるということから腸内フローラ(frora = お花畑)と呼んでいます。

腸内フローラのバランスを取る、3つの菌

腸内フローラに棲みつく腸内細菌は大きく3つの菌に分類されます。

善玉菌

腸内の調子を良好な状態に保ち、消化吸収や免疫を高めてくれたり、健康維持や老化防止になくてはならない存在です。代表的な菌にビフィズス菌や乳酸菌があります。

② 悪玉菌

その名の通り、腸内環境にとって悪い働きをする菌で、菌が増え過ぎると便秘や下痢をしたり、体に悪い物質を作り、発がん性の物質を作り出したりする菌です。代表的な菌にはウェルシュ菌があります。

③日和見菌(ひよりみきん)

基本的には善玉菌・悪玉菌のどちらにも属さない菌ですが、菌が多い方の味方をし、自らの属性を変化させることのできる菌です。

この3つの菌の理想的な割合(善玉菌2・悪玉菌1・日和見菌7の割合)を保つことで腸内フローラをベストなバランスに保つことができると言われています。

腸内フローラを改善するための腸活

セロトニンのバランスを保ち、心身ともに健康でいるために重要な腸内フローラの状態ですが、具体的にどのように整えていくことが効果的なのでしょうか。

善玉菌を増やし、悪玉菌を減らす食事

まず、すぐに改善できるのが食生活です。
理想的な腸内フローラに改善するためには善玉菌が含まれている納豆やヨーグルト、キムチなどの発酵食品と善玉菌のエサになる植物繊維とオリゴ糖を多く含む野菜や果物、豆類などの食品を合わせて摂ることが効果的です。

また、悪玉菌のエサになるグルテンが含まれるパンや麺類などの小麦粉を使った食品や肉や卵などの動物性のタンパク質が多い食品の摂りすぎに注意することも腸内環境の改善に繋がります。

腸を動かし、自律神経を整える睡眠

良質な睡眠をとることは、腸の働きをコントロールしている自律神経を整えることにも繋がります。交感神経と副交感神経がそれぞれ働くことで、腸の弛緩や収縮のぜん動運動が行われるので、睡眠不足などから自律神経のバランスが乱れてしまうと、腸の動きが悪くなり、便秘や下痢に繋がってしまうことがあります。

自律神経のバランスを崩さないためにも睡眠不足を解消し、しっかりと休息をとり、リラックスした時間を過ごすことが大切です。

腸の活性化に繋がる適度な運動

日々の適度な運動は血の流れを良くし、酸素を全身に巡らせ、体に良い刺激を与えてくれます。自律神経にも良い影響を与え、腸の活性化にも繋がるため、腸のぜん動運動を促し、悪玉菌を増やさないための便秘対策にも効果があります。

軽いウォーキングやストレッチなどもおすすめですが、近年、より注目されているヨガも腸内環境の改善に効果的です。ヨガは深く呼吸をすることで、リラックス効果が高まり、副交感神経を優位にしてくれます。副交感神経が優位になることで腸が活発になるので、便秘解消にも役立ち、腸内環境を整えることができます。

まずは2週間から!腸内環境を改善する意識を

不規則な生活をしている方でも、食事・睡眠・運動など、腸内環境を意識した生活をすることで、早い方であれば、2週間ほどで効果が出てくるということが分かっています。

腸を整えることで、脳が感じるストレスを減らし、脳のストレスが減ることで、腸内環境が整うという、腸と脳の相互に影響し合う関係を理解し、腸内環境を整え、心身ともに健康的な生活を意識してみませんか。

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